第27回、広重・名所江戸百景「広尾ふる川」(春22景)(その1) [広重・名所江戸百景]

取材:2018年9月5日(水)
アップ:2018年9月30日(日)

今月の初め、知り合いが、南麻布で夕方から、ヴァイオリン・リサイタルを行うということで、その前に、どこか広重の名所江戸百景の取材をしようと思いました。地図を見たところ、演奏会場のすぐそばに、名所江戸百景「広尾ふる川」の舞台となった場所があり、ここを取材することにしました。

#01、広重画名所江戸百景「広尾ふる川」(1856年)
%01広重名所江戸百景広尾ふる川.jpg
 まず、この「広尾ふる川」ですが、なんとも地味な絵です。名所江戸百景で採り上げられる風景は、著名な神社仏閣、花鳥風月で特徴のあるところ、謂れのある名木、伝説や物語の舞台となったところ等、なにか名所たる所以のある所です。
 しかし、この絵で特徴的なものは、川と橋及び画面左に料亭のようなものが見られるだけで、絵そのものから、名所江戸百景に選出された要素は見当たりません。
 但し、表題には示されていませんが、正面奥の丘状の部分は、「広尾の原」と言って、将軍の鷹狩り、または庶民の遊歩散策の場所として、「江戸名所図会」に採り上げられていることから、名所江戸百景でも採り上げたものと思われます。

#02、名所江戸百景「広尾ふる川」が描かれた場所近辺の地図
%02地図天現寺近辺地図.jpg
私が、参考にしている、名所江戸百景に関する種本(注1)には、この絵を描いた場所として、「南麻布天現寺橋を渡った先にあった広尾原を描いていると考えられる」とだけの記載で、描かれている橋の橋名も上流から描いたのか、下流から描いたのか等詳しい記載はありませんでした。
注1)広重の大江戸名所百景散歩、人文社、1996年

#03、「広尾ふる川」関連写真撮影場所
%03広尾ふる川撮影場所詳細.jpg
広重が画いた名所江戸百景と同一視点で写真を撮るというのが、本ブログの命題ですが、広重の江戸末期の視点がはっきりしないまま現場に行きました。従って、広重の視点の可能性のあるところを、全部撮影して来ました。
※図中④~⑫の地点は、以下の写真#04~#12の写真と対応します。

#04、広尾病院の北側にある橋から西方を望む
%04広尾病院近辺から西方を望む.jpg
広尾原は、広尾病院の西の方にあったと考えられるので、まずここから、西方を撮影しました。
画面向かって左は、広尾病院、右は岸ぎりぎりまで、高層の建物がびっしり建っています。

#05、天現寺橋から西方を望む
%05天現寺橋から西方を望む05B.jpg
見えている範囲は、#04とほぼ同じです。

#06、天現寺橋交差点(歩道橋上)から西方を望む
%06天現寺橋交差点(歩道橋)から西方を望む07B.jpg

広重の「広尾ふる川」は、広重得意の俯瞰描写で画かれています。広重の視点に幾分かでも近づけるため、歩道橋の上から、西方を撮影して見ました。

#07、天現寺橋交差点から南西方向を望む(Googleストリートビュー)
%07天現寺橋交差点から南西方向を望む07C.jpg
今までの写真では、建物等で、視線がさえぎられ、広尾原方向が見通せないので、ちょっと視点を変えて、遠景が見えるようにして見ました。
※但し、Googleストリートビューでの画像です。

#08、天現寺橋親柱(南東のもの)
%08天現寺橋南西親柱14B.jpg
その他、参考写真として撮影しました。

#09、「清流の復活」の石碑
%09天現寺橋清流の復活13B.jpg
天現寺橋の南東のところにある石碑です。
これに関しては、次回説明します。

#10、天現寺橋交差点全景
%10天現寺橋交差点34B.jpg


#11、天現寺
%11天現寺33D完.jpg
交差点名、及び橋の名前の元となったお寺です。

#12、亀屋橋から西方を望む
%12亀屋橋から西方を望む36C完.jpg
念のため、天現寺橋のかなり東方からも撮影して見ました。

以上、一通り、広重が画いたと思われる視点の候補はおさえました。
しかし、どこの場所が正解としても、いずれの写真も、両岸ぎりぎりまで、建物等が迫っており、広重の広尾ふる川の絵とは、大変かけ離れていました。
次回は、橋のたもとにある料亭の建物や広尾原について、および、清流の復活の碑等に関し、考察致します。
(続く)


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コメント 4

ちゅんちゅんちゅん

こんばんは!
地図と実際の場所と・・・
面影が重なる部分が少なく(面影はほとんどないのでは?) 
説明されても???くらい変わっているんでしょうね☆
by ちゅんちゅんちゅん (2018-09-30 23:02) 

きたろう

ちゅんちゅんちゅんさんコメントありがとうございます(*^_^*)
昔の面影が一番残るのは、なんと言っても神社仏閣があるところです。二番目は地形に大きな特徴があるところです。下から二番目は、石碑や、教育委員会の史跡の表示板のみがあるところです。最下位は、全くなんの名残も無いところです。今回の取材では、昔の名残は、見つかりませんでしたが、「広尾ふる川(その2)で、昔から今への歴史を考察します。
by きたろう (2018-10-01 07:28) 

SORI

きたろうさん おはようございます。
風情のある版画です。今は同じ景色は見ることが出来ないけれども現在の周辺写真があると一味違った印象になります。
by SORI (2018-10-05 05:50) 

きたろう

SORI さんコメントありがとうございます(*^_^*)
実は、数日前、この「広尾ふる川」に関する取材は、全く的外れだったという事実が発覚しました。今週中に、再取材し改定版を掲載予定です。
お騒がせ致します<m(__)m>
by きたろう (2018-10-07 07:11) 

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